今月は兎一家のにぎやかなお正月の景色。
お節料理に模した干し芋は歳時記では初めての色物です。
ちょっと脱線しますが、
色物とは、本来寄席などで落語の合間に入る、
漫才や音曲、曲芸、奇術などを指します。
ここでは珍しい干し芋のこととご承知ください。
紫色の干し芋は「ふくむらさき」。
パープルスイートロードを品種改良したそうで、
名前程甘くなかった親芋より甘みもアップしています。
人参芋系の平干しは「ほしあかね」。
こちらは「ほしきらり」が親で人参のような味と甘さを感じます。
丸干し芋はお馴染みの「紅はるか」角切り芋は「ほし黄金」です。
「福」が「あかね」と「黄金」を呼んで、
「こいつは春から縁起がいいわえ」と言いたくなりますね。
お馴染みのこの言葉、実は歌舞伎の、
「三人吉三巴白波(さんにんきちざともえのしらなみ)」という演目で、
お嬢吉三が言う名台詞として有名です。
ちょうど今年の元旦にも放送されていました。
白波とは盗賊のことで、
吉三郎という同じ名をもつ三人の盗賊を中心に、
彼らを取り巻く複雑な人間関係と因果応報の物語です。
けして明るく楽しい話ではないのですが、
作者の河竹黙阿弥さんは、人生というものは、
そういう不条理の連続だと言いたかったのかもしれませんね。
「思い通りにはいかないのが人生」と諦めるのではなく、
それを面白がって過ごしていきたいと感じました。
今年もよろしくお付き合い戴けましたら幸いです。
干し芋マイスター 福井保久
干し芋マイスター 福井 保久
サツマイモの中に潜む美味さをどこまで引き出せるか、色、艶、食感、そして味を極限まで追求。
干し芋ひとつひとつをマイスターの誇りにかけて
最高のものだけを世に送り出している。