初夏になるとあちらこちらの庭先で、
オレンジ色のふっくらとした実が目につきます。
子どもの頃、遊びの途中にちょっと失敬して、
おやつ替わりに食べた枇杷の実の甘酸っぱい味。
たまに見つかって怒られたりもしましたが、
手に滴る果汁の瑞々しさが今でも思い出されます。
この句を見つけた時ちょっと不思議な気がしました。
枇杷の花は杏仁豆腐のような芳香がするそうですが、
実から感じる香りは仄かで、あまりイメージがないからです。
と、ここまで書いて急に思い至ったのは、
ラジオの電波が深夜になるとよく入ること。
人の感覚も空気も深夜になると澄みわたります。
だから「夜の深さに匂ふ」のが枇杷の実の香りだったのかと。
友人から頂いた枇杷と梅、そして空豆は、
ほんの短い今の時季だけ収穫できる貴重な初夏の果実です。
いくら冷蔵技術や流通が発達しても一年中手に入るわけではありません。
熟成干し芋も一年に一度だけ作られて、
その年と同じ味わいは二度とありません。
そういうものに心が惹かれるのはきっと私だけではないと思います。
干し芋マイスター 福井保久
干し芋マイスター 福井 保久
サツマイモの中に潜む美味さをどこまで引き出せるか、色、艶、食感、そして味を極限まで追求。
干し芋ひとつひとつをマイスターの誇りにかけて
最高のものだけを世に送り出している。