檸檬は10月の季語なので12月にはふさわしくないかもしれません。
それでもあえて今月の歳時記に使いたいと思った理由があります。
先日干し芋の加工をしている時、
干し芋仲間のOさんが自宅の庭の檸檬の木から、
もぎ取ったばかりの実をたくさん届けてくれました。
そのはちきれそうなお日様色の実を見た時、
今月ご紹介するのはこれしかないと感じました。
と同時に智恵子抄の「レモン哀歌」のことを思い出しました。
それは高村光太郎さんがうたった妻が息を引き取る日のこと。
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
と、その瞬間に意識がはっきりとした智恵子さんは、
深呼吸を一つしてすべての器官が止まります。
年とともに自分の死というものを時々考えるようになりました。
智恵子さんの死は、私にとってある意味理想的です。
以前地元の演劇祭で「よく生きる/死ぬための ちょっとしたレッスン」
という体験型の演劇に参加したことがあります。
その時に「死を思うことは、生を思うことと同じ」だと感じました。
よく生きるためにも、
この年の瀬に死を考えるのもいいのかもしれません。
干し芋マイスター 福井保久
干し芋マイスター 福井 保久
サツマイモの中に潜む美味さをどこまで引き出せるか、色、艶、食感、そして味を極限まで追求。
干し芋ひとつひとつをマイスターの誇りにかけて
最高のものだけを世に送り出している。