実は我々は干し芋業界の中にあって、新参者で変人です(笑)
静岡県在住だった創業社長が35年前に、当時サーフィンのメッカである茨城県の阿字ヶ浦海岸にサーフィンに来た時に何気なく食べた干し芋の味に感動してしまいました。(阿字ヶ浦は干し芋産地です)。
今まで食べていた静岡県産ものとは全く違う、やわらかくて、つややかで、甘い、芋だけでこんなに甘くなることも信じられませんでした。
その味が忘れられなくて、数年間時々取り寄せては、知り合いにも分けていました。そうしたらとても喜ばれ、その干し芋を望む声がどんどん増えてゆきました。気がついたら、サラリーマンを辞めて、とうとう干し芋屋を始めることになってしまったのです。
最初は農家に足を運んで、真面目に、意欲的に干し芋栽培をしている方たちを探し当て、売ってもらえるように直接交渉してまわりました。
こちらの情熱が伝わり、本来は自分たちの自家消費以外、外に売ることをしてこなかった農家の方たちの信頼を得ることが出来、少しずつ干し芋販売業者としての地位も確立していった頃、大きな壁にぶつかったのです。
干し芋農家の高齢化で生産量がどんどん減っていく現状でした。
しかし、もっと心残りは、本当に美味しい干し芋がなくなっていくことです。
昔ながらの干し芋づくりをする農家が少なくなり、生産量を確保するために産地全体が効率優先になってきていることです。
干し芋づくりには数多くの工程(農作業)がありますが、本当に美味しい干し芋を作るためには、どれひとつも欠かせないものです。
それなのに生産効率優先の為、その大切な工程が段々と省略されていくのです。
我々は契約農家に頼るだけでなく、自分たちの手でこの大きな壁を乗り越えようと決めました。
自分で畑をもって、自ら耕し、生産工程を簡略化することなく、昔ながらの製法で手間はかかるけど感動的な美味しさを作り出すことが出来る干し芋作りをやって行こうと!
更にその頃頂いた1通のお手紙が我々の心をある方向に導いたのです。
「アトピーの子供に安心して食べさせることが出来るおやつを探していた」
我が子に安心して食べさせることが出来る、美味しくて安全な食べ物・・・
日本にはそれまで、 ”有機干し芋” というものは存在しませんでした。
マーケットも小さいために、そんなに手間をかけて作ることにも採算が合わないからです。
でも我々はこのお母さんのような方の気持ちになんとかして応えたい。
健康食である干し芋を更にバージョンアップさせて、胸を張って安心、安全を保証できる、美味しい干し芋をどうしても作りたくなりました。
有機ほしいもを作るためにはどうしたら良いかを、親しい農家に相談してみたら、皆が口を揃えて「出来るわけはないからやめておけ」と言われました。その言葉がさらに我々の反骨精神に火をつけ、なんとしてもやり遂げようと思ったのです。新参者だったので、いい意味で業界の常識にとらわれなかったのも無謀な賭けに踏み出す勇気になりました。
我々の挑戦は業界の中では”異端”ですが、特に革新的なことをやっているわけではありません。熟練の干し芋農家が作っていた昔ながらの、手間暇かけた工程で、美味しい干し芋を再現しているのです。
でも想像以上に有機干し芋作りは大変でした。試行錯誤の繰り返し。生産量もわずかしか採れず ”断念”の文字が何度も頭をよぎりました。
干し芋はアレルギーの方も、ダイエットが必要な食事制限をされている方も食べられる究極の健康食です。畑から育てた芋に、何も足さず、寝かせて、蒸かして、干すだけのシンプルなごちそうです。
だから我々の有機栽培で育てた安心の干し芋を赤ちゃんからお年より、食事制限を余儀なくされている方、そして妊婦さんにももっと食べてもらいたいです。
達磨庵は二人の姉妹のファミリー総出で農作業し、手をかけて、愛情込めて作っている干し芋屋です。生産効率は悪いので、たくさんは出来ません。
でも、干し芋ってこんなにも美味しいものだってことを一人でも多くの人に知ってもらいたい。干し芋って日本人の知恵が生み出した、素晴らしい健康食だってことを一人でも多くの人に再発見してもらいたい。
その思いだけで今日も有機干し芋作りに改良を重ねています。